送り仮名とは

送り仮名とは、単語を漢字で書く場合に、漢字に添えるひらがなのことを意味します。例えば、「明るい」の「るい」、「表す」の「す」、「現れる」の「れる」が送り仮名です。送り仮名を付けることで、漢字の読み方を明らかにして誤読を防いだり、単語を読みやすくしたりできます。

「送り仮名の付け方」の原則

送り仮名を付ける際には、原則として語幹を漢字で、活用語尾をひらがなで表記します。この送り仮名の付け方は、内閣告示「送り仮名の付け方」(1973年6月)で定められています。新聞社などの大手メディアや、政府が出す公式文章などは、このルールに則って表記されています。

語幹・活用語尾とは

語幹とは、活用する際に変化しない部分です。活用語尾とは、活用する際に変化する部分です。たとえば動詞「書く」の場合、活用させても「書」という部分は変化しませんが、それ以外の部分である「く」は、書かない、書けますなどと変化します。

例えば、「動く」の場合には、次のように活用します。

未然形:うごかない
連用形:うごきます
終止形:うご
連体形:うごくとき
仮定形:うごけば
命令形:うご

末尾は「〜かない」「〜きます」といったように変化していますが、「うご」は変化していません。この変化しない語幹の「うご」は漢字で表記します。そのため、「動ごく」ではなく「動く」と送り仮名を付けるのがルールです。

送り仮名の間違いやすいパターン

送り仮名には、いくつかの間違いやすいパターンがあります。まずは、(1)そもそも存在しない送り仮名を使用してしまう場合。それ以外に、(2)「許容」を使用してしまう場合(3)「慣用」を使用してしまう場合があります。

「許容」や「慣用」とは、内閣告示「送り仮名の付け方」で定められている、送り仮名の付け方に関するルールの一つです。「送り仮名の付け方」の原則で紹介した、語幹を漢字で、活用語尾をひらがなで表記するルールを「本則」と呼び、それ以外のルールを「例外」、「許容」、「慣用」として定めています。

内閣告示「送り仮名の付け方」で示されているルール
本則(ほんそく):送り仮名を付ける際の原則。
例外(れいがい):本則から外れるが、別の語と区別する目的で認められるルール。
許容(きょよう):本則から外れるが、送り仮名を追加したり省略したりするルール。
慣用(かんよう):本則から外れるが、一般に広く普及しているため送り仮名を省略することが認められるルール。

パソコンやスマートフォンで文字変換を行う場合には、これらの「許容」や「慣用」も含めて候補として表示されます。そのため、意図せず使用してしまうことで、表記揺れやミスが発生してしまうのです。

内閣告示では、「本則」以外に、「例外」と「許容」が記載されており、その区分とは別に「通則7」で慣用に従って送り仮名を付けない語が定義されています。ここでは、分かりやすさを重視し、「通則7」を「慣用」と区分して記載しています。

送り仮名の間違い(1)存在しない送り仮名を使用してしまう場合

そもそも存在しない送り仮名を使用してしまうことで、送り仮名を誤って表記してしまうことがあります。「本則」や「例外」などで定められているルール以外の付け方をしてしまう、例えば、「壊われる」といった表記は、「本則」でも「例外」でも認められていません。

このように存在しない送り仮名は、パソコンやスマートフォンで変換する際、大抵の場合は候補として出現しません。しかし、必ず出現しないとは限らず、誤った送り仮名が候補として上がることもあります。例えば「おさない」は正しくは「幼い」ですが、文字変換で「幼ない」と変換されることがあります。同様に「慎しむ」「短かい」「慌しい」「損う」なども存在しない送り仮名ですが、変換候補に出現することがあります。

送り仮名の間違い(2)意図せず「許容」を使用してしまう場合

意図せず「許容」を使用してしまうことで、送り仮名が揺れてしまうことがあります。「許容」は、送り仮名を追加したり省略したりすることができるというルールです。「許容」のルールの則った送り仮名の付け方は、新聞などの一般的な出版物では使用を認められていません(※1)。そのため、文字変換の際に誤って「許容」を選択している場合もあります。

「許容」には、送り仮名を追加する場合と、省略する場合があります。例えば、「おこなう」は「本則」では「行う」と記載しますが、「許容」のルールでは「行なう」と記載することができます。

(※1)「許容」は、新聞などの一般的な出版物で使用することはありませんが、「許容」の一部に関しては、公用文で使用されています。公用文とは国や公共団体が出す文章のことです。しかし、「許容」の全てが認められているわけではなく、公用文で認められているのは、「通則6」のみです。

「許容」のルール(1)送り仮名を増やす場合とは

「許容」のルールに則る場合、たとえば、「あらわす」を「表わす(本則では表す)」、「あらわす」を「著わす(本則では著す)」、「あらわれる」を「現われる(本則では現れる)」、「おこなう」を「行なう(本則では行う)」、「ことわる」を「断わる(本則では断る)」、「たまわる」を「賜わる(本則では賜る)」というように、活用語尾の前から送ることで、送り仮名を増やして記載することができます。出典:内閣府「送り仮名の付け方」通則1「許容」

「許容」のルール(2)送り仮名を省略する場合とは

「許容」のルールに則る場合、たとえば「うかぶ」を「浮ぶ(本則では浮かぶ)」、「うまれる」を「生れる(本則では生まれる)」、「くもり」を「曇(本則では曇り)」、「かわり」を「代り(本則では代わり)」、「もうしこむ」を「申込む(本則では申し込む)」、「うちあわせる」を「打合せる(本則では打ち合わせる)」といったように、送り仮名を省略して記載することができます。出典:内閣府「送り仮名の付け方」通則2、4、6「許容」

新聞と公用文で認められている「許容」の範囲

新聞と公用文では、「許容」のいくつかのルールのうち、認められるものが異なります。例えば、「通則6」というルールの中の「許容」に関しては、新聞では使用が認められていませんが、公用文では使用を認めています。

新聞 公用文
「通則1」の「許容」 NG NG
「通則2」の「許容」 NG NG
「通則4」の「許容」 NG NG
「通則6」の「許容」 NG OK

送り仮名の間違い(3)意図せず「慣用」を使用してしまう場合

本来「慣用」を使用すべき場面で「本則」を使用してしまうことで、送り仮名が揺れてしまうことがあります。「慣用」とは、一般に広く普及しているため、新聞でも公用文でも認められているルールです(※2)。

たとえば「取締役(本則では取り締まり役)」、「合言葉(本則では合い言葉)」「消印(本則では消し印)」などの、特定の領域の複合名詞は、「本則」ではなく「慣用」に従って記載する語です。

(※2)どの語を「慣用」として扱うかといったルールは曖昧です。内閣府「送り仮名の付け方」では「慣用が固定していると認められる限り、類推して同類の語にも及ぼすものである」定められています。どの語を「慣用」のルールで書くかは、時代の流れとともに変わっていく場合もあるということです。例えば、昭和34年発行「国語学史」においては、現代では「仮名遣い」と表記されている語の送り仮名が省略されて「仮名遣」と表記されています。

しかしパソコンやスマートフォンで「かきとめ」を変換した場合には、「書き留め」も「書留」も候補に出現します。新聞でも公用文でも採用されている送り仮名で書くには、慣用である「書留」を選択する必要がありますが、意図せずに「本則」である「書き留め」を選択してしまうこともあるでしょう。

「慣用」の例

次の例のように、「慣用」は名詞でのみ発生します。例えば、「ふりかえ」は慣用のルールでは「振替」と記載しますが、これはあくまで名詞の場合です。文中で「口座を振り替える」と記載する場合の「振り替える」は動詞のため、「口座を振返る」とはなりません。

書留(本則では書き留め)
組合(本則では組み合い)
両替(本則では両替え)
出典:内閣府「送り仮名の付け方」通則7

経済用語の「慣用」

「慣用」の中でも特定の経済関係の語に関しては、後ろに特定の語が来る時にだけ「慣用」のルールに則って送り仮名を省略します。例えば「もうしこみ」は慣用のルールでは「申込」と記載しますが、これは後ろに「人」「時」などの語がくるときだけ省略できるルールです。「申込金」「申込日」といった具合です。そのため「もうしこみ」を単独で「申込」と記載することはできません。

経済用語の「慣用」の例
預入、受付、売上、借入、支払、振込
上記の用語は、後ろに「人」「時」「所」「機器」「金」「書」「機関」「制度」「品目」「数量」に関する語が続くときだけ、「慣用」のルールに則った送り仮名となります。「人」に関する語とは例えば、員・係・人などの語。「金」に関する語とは例えば、運賃・金額・高などの語です。
詳細:記者ハンドブック P103

送り仮名は、ルールを理解して使う

送り仮名のルールを解説しました。送り仮名には細かいルールがあり、それぞれの違いは分かりにくいものです。しかし、分かりやすく誤解のない文章を書くためには、このように細かな点にも気を配り、スキルを高めていくことが必要ではないでしょうか。

参考文献:
内閣告示『送り仮名の付け方
最新公用文用字用語例集』ぎょうせい公用文研究会
記者ハンドブック』一般社団法人共同通信社
日本語表記ルールブック』日本エディタースクール